取材協力:株式会社松屋フーズ
取材対象:ジャパン・フード・セレクション受賞「 シュクメルリ鍋定食」
株式会社松屋フーズ
1968年の開業以来、松屋ブランドは、「今日のごはんは何だろう?」という、ワクワク感をお客様に提供するべく、「みんなの食卓でありたい」をスローガンに掲げ、食べる歓びを追求してきました。誰もが食べたくなる、本当の美味しさをスピーディかつリーズナブルに楽しめる「みんなの食卓」であるために、そして世界の食のインフラを目指して、松屋ブランドはこれからもワクワクする食の体験を提供していきます。
シュクメルリ鍋定食
商品開発の”きっかけ”
「 シュクメルリ鍋定食 」の開発経緯について教えてください。
この商品の提供を始めたのは2020年、東京オリンピックの年でした。「 世界の美味しい料理を味わっていただきたい 」という想いから、様々な国の料理を検討しました。
その中で、当社が得意とする牛・豚・鶏などの食材を活かせるメニューとして、シュクメルリに着目しました。さらに、ニンニクなど様々な食材を活用したソース作りにも当社の強みを活かすことができ、「 シュクメルリ鍋定食 」は誕生しました。
海外のレシピを参考に、現地の味の再現からスタートしました。試作品が完成してからは、何度も試食を重ねて味の調整を行い、現在の商品が完成しました。
苦労したエピソード
「 シュクメルリ鍋定食 」の開発過程で苦労したエピソードはありましたか?
最も苦労したのは、クリーム系の料理をご飯に合う味に調整することでした。松屋フーズは、ご飯を主とした外食チェーンですので、以下のような工夫を重ねました。
1)醤油など、日本の調味料を効果的に使用
2)レモン果汁を加えることで、ニンニクの風味を引き立てる
3)オリジナルにはないサツマイモを追加し、マイルドな味わいを実現
特にサツマイモの使用は、日本人に馴染みのある食材として、全体の味わいをより親しみやすいものにする効果がありました。このように、海外の伝統料理を日本の食文化に溶け込ませるため、細やかな工夫を重ねています。
様々な食材を試す中で、特に彩りの面から、じゃがいもやブロッコリーなどを検討しました。最終的に、日本の食文化と松屋らしさを表現する食材として、サツマイモを採用しました。これは、日本人の嗜好に合わせながらも、シュクメルリ本来の味わいを損なわないという、絶妙なバランスを追求した結果でした。
SNSでバズる
テスト販売から全国展開に至った経緯を教えてください。
2019年12月にテスト販売を実施しました。その後、興味深い出来事がありました。ジョージア大使館の方々が実際に店舗に来店し、商品を試食してくださったんです。
彼らから「 美味しい 」という評価をいただき、その感想がXに投稿されました。
この投稿が予想以上に反響を呼び、いわゆる「 バズる 」という状況になりました。この反響が、全国展開への大きな後押しとなりました。
直近の2024年2月には、ジョージア大使館と連携して販売促進を行いました。大使館側も非常に好意的に受け止めてくださり、その協力により販売も一層盛り上がりを見せました。
商品開発が与えた影響
「 シュクメルリ鍋定食 」の成功は、その後の商品開発にどのような影響を与えましたか?
当社の基幹メニューは、牛めし、カレー、焼肉定食、ハンバーグなど、従来からの定番商品です。しかし、シュクメルリの成功により、新たな商品開発の可能性が見えてきました。
特に、世界の料理を日本のご飯に合うようにアレンジするという方向性に手応えを感じています。この経験は、今後の商品開発における重要な”きっかけ”となっています。
社内の反応
シュクメルリを開発し始めた頃の社内の反応はいかがでしたか?
最初は「 シュクメルリって何だ?」という戸惑いの声が大きかったですね。そこで、まずは実際に試食してもらうことから始めました。また、耳慣れない「 シュクメルリ 」という商品名をそのまま使用するかどうかについても、社内で議論を重ねました。
開発チームでの初試食の際、どのような反応がありましたか?
最も印象的だったのは「 ニンニクのインパクトが凄い 」という反応です。ニンニクの風味の強さをどの程度に調整するかは、大きな課題となりました。強すぎては食べづらく、抑えすぎるとシュクメルリの特徴が失われてしまうため、その絶妙なバランスを見出すのに苦心しました。
また、家族にも試食してもらい、「 ご飯と合う 」という評価を得られたことで、日本人の味覚に合わせたアレンジに成功したという手応えを感じました。
印象的なエピソード
商品化までの過程で印象に残るエピソードはありましたか?
多くの試行錯誤はありましたが、最も印象深かったのは、松屋が先駆けて提供を始めた「 シュクメルリ 」を、他社もメニュー化し始めたことです。
当初は悔しさもありましたが、これをきっかけに日本でシュクメルリが広く知られるようになったことは、嬉しく思っています。
ただ、「 ジョージア料理のシュクメルリと言えば松屋 」と認識していただけるよう、これからも品質向上に努めていきたいと考えています。
ジャパンフードセレクション受賞
今回のジャパン・フード・セレクション グランプリ受賞について、ご感想をお聞かせください。
ジャパン・フード・セレクションのような食のコンテストへの参加・受賞も、当社にとって初めての経験でした。嬉しい驚きと共に、大きな反響をいただいています。
これまで「 シュクメルリ 」は、お客様投票による総選挙の結果で再販を決めていましたが、今回の受賞を契機に新たな展開を考えています。具体的には、「 松屋の冬の定番メニュー 」として確立させることを目指しています。
本日は、貴重なお話ありがとうございました!