取材協力:山忠食品工業株式会社 – 野村様
取材対象:ジャパン・フード・セレクション受賞「 紀伊のじゃばらもずく 」
山忠食品工業株式会社

海藻をもっと食べてほしい、海藻を美味しく食べてもらいたい。収穫時期になると仕入担当者が産地に入り、収穫状況を見守ります。より良い品質の海藻を自分の目で確かめ、納得のいく海藻のみを買い付ける。海藻への強い思いが私たちの原点です。
紀伊のじゃばらもずく

「 紀伊のじゃばらもずく 」がジャパンフードセレクションでグランプリを受賞されたそうですね。おめでとうございます!さっそくですが、一般的なもずくと「 じゃばらもずく 」の違いについて教えていただけますか?



「 じゃばらもずく 」は当社の看板商品の一つです。主な違いは製造方法にあります。もずく本来の食感が残るような製法を採用しています。
しっかりと太いもずくを使用しているのも特徴です。これにより、一般的なもずくとは異なる食感と食べ応えを実現しています。



なるほど、大変興味深いお話です。このもずくは養殖されているのでしょうか?



沖縄で契約している漁業関係の業者さんに養殖していただいています。収穫時期は主に3月~6月頃になります。この時期になりますと、私が直接沖縄に赴き、漁師さんと一緒に収穫作業に携わります。
このように、生産者との密接な関係を築いているのが特徴です。沖縄で採れるもずくの9割以上が「 オキナワモズク 」という品種です。私たちは漁業連盟と緊密な関係を保っており、決まった量を仕入れさせていただいています。
仕入れたもずくは、三重県亀山市にある本社工場で加工し、そこから全国へ発送しています。このように、生産から加工、出荷まで一貫した体制を整えています。
じゃばらもずくの食感



やはり他のもずくとは、食べたときの食感がかなり異なるのでしょうか?



「 じゃばらもずく 」の食感は非常に特徴的です。噛んだときに”シャキシャキ”という音が聞こえるほど歯ごたえがあります。一般的なもずくと比べると、ぬめりが少し抑えられています。
そのため、箸でつかんだ際、しっかりとした感触があり、バラバラと崩れることがありません。食べ応えのある、他にはない独特の食感を楽しんでいただけます。
お客様の反応と評価



「 じゃばらもずく 」を初めて食べたお客様の反応はいかがでしたか?



「 じゃばらもずく 」は、三杯酢で味付けしたもずくに、別添のじゃばらソースをかけて食べるタイプになっています。これにより、2度美味しく楽しめるという点が評価されています。
パッケージデザインも夏らしい爽やかなイメージで、見た目の印象と柑橘の爽やかな香りが相まって「 夏にぴったりの商品だ 」というご意見をよくいただきます。特に、食欲が落ちがちな夏場に適した商品だと評価されています。
もちろん、もずくの食感に関する評価も高いですね。「 しっかりシャキシャキしている 」という声をよくいただきます。じゃばらソースについても、適度な苦味と爽やかな香りがしっかりと感じられると好評です。
じゃばらもずくのこだわり



「 じゃばらもずく 」のこだわりポイントについてお聞かせいただけますか?



当社には「 新姫もずく 」という長年愛されている看板商品があります。この商品の成功を受けて、社内で柑橘系シリーズをさらに広めていく方針になりました。もずくのベースとなる味付けは三杯酢ですので、それに合う新たな柑橘を探していました。
そんな中、ある農家さんとのご縁があり、「 紀伊のじゃばら 」を紹介していただいたんです。早速、この「 じゃばら 」を使って商品開発を試みたところ、予想以上に美味しい仕上がりになりました。これが、「 じゃばらもずく 」誕生した背景ですね。
私たちのこだわりは主に2つあります。1つ目は、当社の三杯酢ベースの味付けとの相性です。新しい柑橘を探す際、既存の味付けとの相性を重視しました。そして「 じゃばら 」がその条件にぴったり合いました。
2つ目は、お客様への付加価値の提供です。「 じゃばら 」には、花粉症やアレルギー性の症状に効果的な成分が含まれており、この特性は、単においしいだけでなく、お客様の健康的な食生活にも貢献できるのではないかと考えました。
別添えのじゃばらソース



別添えでじゃばらソースを付けるという発想はどこからきたものでしょうか?



じゃばらや他の柑橘系は、時間経過とともに香りが落ちていってしまう特性があります。そのため、食べる直前にソースをかけていただくことで、最もフレッシュな香りを楽しめるようになります。この点を考慮して、別添えの形態を採用しました。
じゃばらを選んだ理由





「 じゃばら 」を選んだ理由を教えていただけますか?他にも様々な柑橘類がある中で、なぜ「 じゃばら 」だったのでしょうか。



当社の「 新姫もずく 」という商品に使用している「 新姫 」が三重県産の柑橘なんですよ。地元の食材を使うことが商品開発のきっかけになっています。三重県では様々な柑橘が取れますが、「 じゃばら 」はあまり知られていない幻の柑橘とも言われています。
私たちは、この「 じゃばら 」をもっと多くの方に知ってほしいと考えました。また、地元の食材を積極的に使っていきたいという思いもありました。これらの理由から、今回「じゃばら」を選ばせていただきました。
商品開発で苦労したこと





商品開発で苦労したことはありましたか?



特にパッケージデザインの面で苦労しました。私たちは、この商品に特別感を持たせたいと考えていました。そのため、今までの商品とは大きく異なるデザインにしようと決めました。
これは私たちにとって一つのチャレンジでした。特に苦労したのは、柑橘の爽やかさを表現することでした。店頭に並んだときに目を引くようなデザインにしたかったんです。
消費者の方が「 これ、何だろう?」と思って手に取ってくれるような、そんな衝動買いを促すデザインを目指していました。
海藻を扱う会社が誕生した経緯



三重県亀山市は海から離れた場所にありますね。そこで海藻を扱う会社が誕生したのは、どういった経緯があったのでしょうか?



当社は1953年、昭和28年から亀山で海藻加工を行っています。先代が「 もずく 」と「 めかぶ 」を特に好んでいました。亀山市の立地も大きな利点となっており、交通の便がとても良く、様々な地域へのアクセスが非常に便利なんですよ。
そのため、全国への配送がしやすいという大きなメリットがあります。こうした理由から、海から離れているにもかかわらず、亀山を拠点として選び、ここから全国へ商品を発送する形をとっています。立地の良さを活かして、効率的な事業展開ができています。



大きな物流拠点もありますね。海藻を美味しいまま長距離輸送するというのは想像がつきませんが、具体的にどのように配送されているのでしょうか?



基本的には冷蔵トラックで配送しています。海藻の品質を保つために、温度管理には特に注意を払っています。



配送時に品質が落ちないようにするための、何か特別なルールがありますか?



トラックの温度帯が変わっていないかを常にチェックしています。なぜなら、温度帯がほんの少し変化しただけでも、中身が膨張してしまうなどの問題が起こる可能性があるからです。
単に品質管理のためだけでなく、万が一問題が発生した際の原因追求にも役立つんですよ。常に最高品質の海藻を届けるために、こうした細やかな配慮を欠かさないようにしていますね。



先ほど、もずくの旬は3月~6月頃とおっしゃっていましたが、その期間以外はどのように対応されているのでしょうか?



3月~6月以外の期間は、養殖に力を入れています。いわば、もずくの赤ちゃんを育てているような感じですね。
今後の展開と社会貢献



今後はどのような商品を展開していきたいですか?



柑橘シリーズのラインナップをもう少し増やしていきたいと考えています。現在、新商品の企画を進めており、様々な地域から柑橘を取り寄せて、商品開発や販売に向けて準備を進めている段階です。
当社の商品ラインナップがまだ比較的少ないこともあり、特にナチュラルブランドの商品数を増やしていきたいと考えています。



「 じゃばらもずく 」は、花粉症やアレルギー症状に効果的な成分を使用するなど、単に美味しさだけでなく、様々な思いが込められた商品だと感じます。会社として、社会貢献も考えているのでしょうか?



地元への貢献は当然のことと考えています。それに加えて、海藻が体に良いというイメージは漠然とあると思うのですが、具体的にはあまり知られていないのが現状です。そこで、普段の食卓に「 もずく 」「 めかぶ 」を並べてもらえるよう努めています。
現在、様々なイベントへの参加を計画しています。特に地元のイベントに参加し、地域の子供たちや親子世代に向けて、食品に関する情報発信をしていきたいと考えています。このような活動を通じて、海藻の良さを広めていく取り組みを進めていきたいと考えています。



本日はお話しありがとうございました!







